以下の内容は、1997年の研究部会資料(1997年2月18日)をもとに要約したものです。実際の原稿には執筆当時の先生方の名前が記載されていますので、概要のみ掲載します。
1. 概要と役割
全美協は全国約300校の大学・短大、600名を超える会員を擁する組織です。幼稚園から高等学校までの造形美術教育に関わる教員養成の充実と、造形教育の振興を目的としています。国立教育大学系の教大協(日本教育大学協会全国美術部門)と合体し、全国造形教育連盟大学部会の一翼を担っています。
2. 設立の経緯
1976年(昭和51年)に全国造形教育連盟の内部組織として発足しました。当初は国・公・私立混合で運営していましたが、1988年に組織を改編し、新規約のもとで現在の全美協を整備しました。1989年4月1日に新組織として正式に発足しています。
3. 組織の課題と改革への提言
研究部会の分析では、加盟形態の曖昧さによる会費未納入、約646校という規模の大きさゆえの問題共有の難しさ、会長への業務集中などを課題として挙げています。改革案として、組織の法人化、免許種別ごとの分科会制の導入、専任事務スタッフの配置、地方ブロック制の整備などを提案しています。
4. 各校種における造形教育のあり方
幼稚園・保母養成課程では、学生の造形活動への苦手意識の解消が課題でした。コンピュータや写真・ビデオなど多メディアの活用が有効であり、保育現場との連携強化の必要性も指摘しています。
小学校教員養成課程では、「生きる力」の理念が造形教育の目指す方向と一致するとの見解を示しています。「幸福とは何か」を教育の根底に置くことの重要性を説くとともに、造形美術教育の専門家を育てる視点の確立を求めています。
中・高等学校教員養成課程では、コンピュータをツールとして活用した造形活動の充実を提唱する一方、身体全体を使う素材との直接体験や鑑賞教育の重要性も強調しています。また、作品の出来栄えよりも過程や意欲を重視した評価への転換も求めています。
5. 情報教育・マルチメディアと造形教育
造形教育はもともと双方向的な性格を持つ点でマルチメディア教育と親和性が高いといえます。コンピュータ活用の拡大が期待される一方、著作権問題や直接体験の機会減少、教員研修の不足といった課題も指摘しています。デザイン系の教育現場では、コンピュータ操作スキルと並んで、手作業による基礎力やデッサン力の重要性も改めて確認しています。
6. 造形教育の国際交流と比較研究
明治期以来、日本の造形教育は欧米をモデルとしてきた歴史があります。INSEAの大会を通じた各国との交流から、地域の文化的伝承と自由な表現の両立の重要性を認識しています。また、米国のコンテクスチュアリスト的研究として、児童中心主義の問い直し、地域社会に根ざした美術教育、障害者支援や環境問題との関連など、美術を社会的・文化的文脈で捉える多様な視点を紹介しています。
7. 研究部会について
本報告書は、1995年の全美協長野大会での提案を受け、研究部会が1996年から1997年にかけて作成しました。全美協のあるべき姿を問い直すことを出発点とし、実質2ヶ月間という短期間ながら原稿用紙150枚(B5判47頁)に及ぶ原稿が集まりました。各委員の献身的な取り組みによって完成した本資料は、当時の全美協の活動指針として位置づけています。
